「東京の台所 北京の台所/ウーウェン」よい本です。ウーウェンさんは、ちょうど文革天安門事件に直面しているみたいで、当事者としての体験も交えながら、どのようにして日本に来て、料理研究家になったかが書かれています。もちろん、日本に渡ったのも、料理研究家になったのも、文革天安門事件がターニングポイントになっていたりするのです。
そして、ところどころに北京の風習と食の関係、それも「食は広州にあり」みたいな贅をつくしたきらびやかな料理ではなく、手で粉ここねたりする中から感じる食だったり、体を作る要素としての食を身近に語っているので、とても気持ちがいいのです。
香港は大好きだし、香港の食の本ももちろん好きなんだけど、けっこう身近というよりも、贅をつくすとか珍味みたいなところに重きがおかれるような本も今までたくさんあって、そんな本はあまりスイスイと読めなかったんだけど、ウーウェンさんの本はまったくゆったりといい感じに読めます。